京友禅とは、江戸時代に扇絵師であった宮崎友禅斎によって確立された染色技法で、京都でつくられるものをそう呼ぶようになりました。技術的には細かく分けると様々な技法があります。現代では機械のプリントによる大量生産が多く出回っておりますが、本来伝統工芸である京友禅とは一線を画して見るべきものだと思います。友禅染めは下絵から始まり、糊置き、色挿し、地染め、蒸し、水洗、湯のしと大きく数えるだけでも、たくさんの工程を経て時間と手間をかけてやっと出来上がってくるものです。それぞれの工程にはその道の職人がいて、長い修練を経てつちかった技術の結晶体として、はじめて商品になりうるのです。工程は主に分業制で多くの人がかかわって友禅染めが染め上がってきます。
最初に着物の絵模様や柄をデザインします。完成形をイメージして袖の柄、身頃の柄、全体の図案を考えます。古典柄の振袖では伝統的な古典文様を使って図案をつくっていきます。
京友禅の図案
着物の全体に下絵を描くための下準備として、白生地の反物を一旦着物の形に縫い合わせます。着物の形に仮仕立てすることを仮絵羽といいます。名前の由来は着物を鳥の羽根の様に広げたら一枚の絵の模様になるという意味だそうです。
白生地の反物 着物を作る前の一番最初の形です。
図案をもとに青花の液で表面に薄い色で下絵を描いていきます。着物が出来上がった時に、絵の模様が縫い合わせできっちり合うように、縫い込みの深く(仮絵羽の表面に出てこない下の部分)まで細かく描く必要があります。
下絵を描き終えたら、一旦仮絵羽をほどいて反物(丸く巻いた状態)に戻します。木の枠にピンと張って、(伸子張りといいます)下絵の輪郭線に糊を細くおいていきます。糊はもち米をといたものや、ゴムを溶かしたものを使います。輪郭線に糊を置く理由は柄の部分と地色の部分の境界線をはっきりさせて、にじまない様にするためです。
まず、地入れといってにじみを防ぐために柄の部分に豆汁を挽いてから筆や小さい刷毛に染料を含ませて色を挿していきます。花びらや葉の色にも濃淡をつけることによって、奥行き感を与えるのが手描き友禅の味わい深いところです。作業は友禅机といって真ん中に大きな穴の開いた机の上でおこないます。下から電熱器で温めて乾かしながら色を挿すことによって染料がにじむのを防ぐためです。昔は炭火で温めていたのですが、しばしば炭火がはじけ飛んで反物に焦げをつくってしまい、せっかくの反物が駄目になったこともあったそうです。
友禅の色挿しの工程
色挿しした柄の部分が生地に定着するように生地をおりたたんで吊るして大きな蒸し箱にいれ高温で一時間ほど蒸します。
蒸し工場の作業
次の工程で地色を染めていきますが、その前に先ほど色挿しした柄の部分は染まらないように糊で覆っていきます。輪郭線をとるのに使った糸目糊の道具と違い太めの筒を使い絞りだしながら、糊をおいていきます。
反物全体を長く広げて吊るし、大きな刷毛で地(背景の地色の部分)を染めていきます。均一にむらなく染めるためにも経験と技術が必要な工程です。生地を濡らしたりして染料の境界線をぼかす技法もあります。地染めが終わるとまた一旦蒸します。一般的には柄を描いてから地を染めますが、この工程が前後逆の工房もあります。
地染めの工程
防染に使った伏せ糊や余分な染料を水で洗いながします。昔は鴨川や堀川などでこの洗い流す作業が見られ「友禅流し」とよばれ風流なものでした。現在では屋内の大きい水槽で作業をおこなっています。水洗いをしたのち、一旦乾かしてから蒸気にあてて、生地の小じわなどをとって整えます。
柄の細かい部分に仕上げで色を筆で挿して最終仕上げとして整えます。その後、金箔や金粉を貼ったり、部分的に刺繍を加えたりして華やかにしていきます。装飾の仕上げが完成したら、上げ絵羽といって仮絵羽の状態に再び縫い合わせたら、商品として完成です。
印金(箔置き)